「いい?あんた達!1時間後にはしっかり船に戻るのよ。ここでの滞在時間はそれだけなんだからね!!」
「はぁ〜い、ナミさんvv貴女の為にサイッコーの食材を仕入れてきまぁすv」
この船のコックでもあるサンジは目をハートにしながら船に残っているナミに向かって手を振った。
船首の方からウソップが顔を覗かせる。
「お〜い!ついでに卵買ってきてくれ!」
「あぁ?テメーで行けよ。」
「船の修理で手が離せねーんだよ!!」
両手のトンカチと釘をサンジに向けて振り回す。
航海の最中壊れた部分を直すのがもっぱらウソップの仕事となっている。
確か本来は狙撃手・・・のはず。
「仕方ねーなぁ・・・1パックでいいんだな?」
「あぁ・・・。あ、できれば安いやつな。お一人様1パックまでとかあるやつ!そんでサイズはLサイズ!そっちの方がお得だからな・・・んぁ〜でもたまには赤玉とかも・・・」
「てめーで買いに行け!」
サンジの側にあったと見られる棒切れがウソップの頭めがけて飛んできた。
「んがっっ」
「うわーっウソップの瞳孔が開いてるぅ!!」
カーンと言う音とともにウソップが倒れ、それと同時に船医であるチョッパーの驚きの声が上がる。
その横を腰に刀を差したゾロが我関せずと言った様子で通り抜けて行った。
「・・・その辺走ってくる。」
「ちょっとゾロ!アンタ方向音痴なんだから戻ってこなかったら置いてくわよ!」
「あぁ?」
剣豪であるゾロは筋金入りの方向音痴である。
本人はあまり分かっていないが・・・。
「直線走りなさい!あの時計台のある広場、見えるでしょ?あそことココの往復だけにしなさい。」
「いちいちウルせぇ女だなぁ・・・」
「アンタが迷うのがいけないんでしょ!」
ナミが拳でゾロの頭を殴った。
ゾロは何やら文句をつぶやきながらも言われたとおり時計台目指して走り始めた・・・が。
「「「そっちは右だ!!!」」」
船に残っていたナミ、倒れていたウソップ、看病していたチョッパーの3人が声を合わせてゾロに突っ込みを入れた。
船の上から何度も方向を教えられながらようやく広場に向かってゾロが走り始めた。
「ひゃー!!食った食った!」
一番に船を下りていたルフィは早速食べ物の匂いを辿り、町にあった食堂で食事を済ませると一番目立つ時計台のある広場へと向かっていった。
するとなにやら人だかりができていたので、興味をひかれて前に進み出た。
「何だ?」
そこで行われていたのは奴隷市だった。
どこかの海賊が捕まえてきた捕虜を高額な料金で貴族に売っていたのだ。
初めはたくさんいたであろう奴隷も残りはあと一人。
それもまだ幼い子供だった。
「さぁ〜て皆様!今日残るはこの少女!見た目はちょいと惚けてますが、その歌声は天下一品。元ノースブルーの貴族の娘なので教養もあります!貴方好みに育てることも可能な年齢!さぁ、どなたかいらっしゃいませんか!!」
最前列にいたシルクハットを被った太った男が手を上げた。
その手には豪華そうな指輪や時計がジャラジャラ付いている。
売人が揉み手をしながらその男に近づいた。
「さすが旦那様!お目が高い!!」
「歌声を言うのを聞かせてはもらえないか?それによってはあの値に上乗せしてもいい。」
少女の値段設定はかなり高め。
それに上乗せするという言葉に売人の目がキラリと光った。
「勿論ですとも!少々お待ち下さい。」
コメツキバッタもビックリなほど頭をぺこぺこ下げた売人は、その後檻の中で小さくうずくまっている少女の元にいる見張りに声を掛けた。見張りが少女に声を掛けるが、一向に歌おうとしない。
いらいらした見張りが手にしていた鞭で地面を数回叩くとその音に怯えるように、立ち上がった少女は小さな声で歌い始めた。
それは教会で歌われている賛美歌だった。
「・・・アイツ」
歌声に惹かれるようルフィは歌っている少女の近くへ人を押しのけて進んで行った。
やがて歌い終わると広場から拍手喝采が少女へと向けられた。
中には調子に乗ってお捻りを投げ出す人まで出てくる始末。
少女の側にいた見張りやその仲間が飛んできたお捻りを拾い集める中、先程手を上げた男が嬉しそうに手を叩き、何やら売人と話を進めている。
その隙にルフィは檻に近づき少女に声を掛けた。
「おい、お前!!」
しかしルフィの声は観衆の声に掻き消され少女の耳まで届かない。
ルフィは思い切り息を吸い込んで一旦息を止めた。
そして思い切り大きな声で少女に向かって叫んだ。
「ここから出たいかぁー!!」
「え?」
今度は少女の耳に届いたが、売主である男や買主である男にまでルフィの声が届いてしまった。
真っ赤な顔をした売人がルフィに近づいた。
「おいガキ!コイツはたった今こちらの旦那様がお買いになったんだ。馬鹿な事言ってんじゃねぇ!」
「そうだコレはもう私の物だ。それともなんだ?キミは私よりも高い金を出してコレを買おうというのか?」
「金はねぇ。」
あっさり言い放つルフィを男達や周りの人間が嘲笑う。
「金がなきゃ女は買えねぇんだよ。さ、とっとと・・・」
見張りの男がルフィの肩を掴もうとした瞬間、男の背後からそのわきに蹴りが一発入った。
「レディを売買してんじゃねぇよ!!」
買い物を終えたサンジがルフィの声を聞きつけこの輪の中に飛び込んできたのだ。
その隙にルフィは再び少女に声を掛ける。
「おい、お前!聞こえてるか?」
少女は飛んでいった見張りの男から視線を目の前にいる麦わら帽子を被ったルフィへと向けた。
「出たいか?」
「でも・・・」
「お前はどうしたいんだ!さっきお前助けてって言ってただろ!!」
ルフィの後ろでは先程見張りを蹴り飛ばしたサンジが、側にやってくる売人の仲間と見られる男達を引き続き蹴り飛ばしている。
「どうなんだ!!」
「・・た・・・す・・・けて・・・」
少女の声を聞いてルフィがにっと笑った。
「よし、助けてやる。」
ルフィは檻を両手で掴むと思い切り力を込めて左右に引っ張ろうとしたが上手くいかない。
「ありゃ?何か上手く壊れねぇなぁ?おーいサンジ!」
「今、取り込み中だ!」
片手に食材を抱えながら、奴隷市を行っていた売人とその商品を買った金持ちの手下らしき男達を片っ端から片付けている。
「んーどうしたもんかなぁ・・・」
「何してんだ、ルフィ?」
「おぉ!ゾロ!いいトコに来た!これ、貸してくれ。」
そう言うとルフィはゾロの腰にあった剣に手を伸ばした。
ゾロが慌ててその手を押さえる。
「勝手に触るんじゃねぇ!」
「だってよぉ、この檻硬くって開かねぇんだ。」
ゾロが視線を檻に向けると、中に入っていた少女がビクッと体を震わせた。
ゾロはあきれたような顔をしてため息をつくと、腰に刺していた刀に手をかけた。
「・・・出せばいいんだな。」
一瞬空間に閃光が走ったかと思うとあっという間に檻が真っ二つになった。
ルフィの近くに立っていた少女はボーゼンとその切り口を見つめている。
「よっこいしょっと・・・ほら、開いたぞ。」
ゾロが切った所から檻の中に入るとルフィは、にぃっ・・・と笑って中にいた少女の手をとった。
その手はまるでがい骨のようにやせ細っていて、少女特有の柔らかさは全くなかった。
「お前細いなぁ・・・肉食ってるか?肉?」
そんなルフィの声が届く前に、少女はルフィの腕に倒れこむようにして意識をなくした。
「うわぁ〜っっ!死んだぁ〜!!」
「ど阿呆!早く出て来い!」
ルフィは倒れた少女をまるで米俵でも担ぐように肩に抱えて檻を出てきた。
「レディを粗末に扱うんじゃねぇ!!!」
食材を抱えたサンジがルフィの頭に蹴りを入れ少女を奪うと、袋を一旦地面に置いた。
意識を失った少女を労わりながら抱き直し、側で頭を抱えているルフィを睨み付ける。
「衰弱しきってる、しかもレディを荷物みたいに担ぐんじゃねぇ!壊れ物のガラス細工のように丁重に扱え!!」
「別に壊れねぇじゃん。」
「物の例えに決まってんだろ!!」
「おいおい、どうでもいいけどこれからどーすんだ?」
ゾロがサンジの代わりに食材の入っていた荷物を持ちルフィに尋ねた。
周りにいたはずの人間はあらかた倒され、他の人間は遠巻きにこの様子を眺めている。
「コイツ・・・船に乗せるのか?ルフィ?」
ルフィはサンジの腕に抱かれている少女の顔を見てからゾロの方へ向き直ると、いつものように楽しそうに笑った。
「音楽家!見つけたぞ!コイツすっげー綺麗な声で歌うんだ!」
「レディの意見は?」
「出たいって言ってたぞ。」
「それはあそこからだろ?」
ゾロとサンジが頭を抱える中、ルフィは少女の手を取るとからくり人形のように手を動かした。
「ほら、行きたいって言ってる。」
「「お前が言ってるだけだろうが!!」」
やがて誰かが通報したのか、海軍らしき制服がこちらに近づいてくるのが見えた。
「とにかく続きは船に戻ってからだ。」
サンジは少女を起こさないように、港に向かってなるべくゆっくり走り始めた。
「そうだな・・・」
ゾロは食材を片手で抱え、もう片方の手で刀を握り海軍の攻撃に備えた。
「なぁ、やっぱ歌い始めはゴーイングメリー号の歌だよな!」
ルフィの頭では既に音楽家が活動を始めているらしい。
「「まだ決まってねぇだろ!!」」
このやり取りは3人が船に戻るまで続けられた。
ワンピースのヒロイン設定みたいなもの。お約束の出会い編ですね。
いや〜前々から書きたかったんだけど、サンジ好きな私としてはそれにあわせてヒロインを作りたかったんですが・・・が!人間の刷り込みって怖いですねぇ(笑)「サンジ×ナミ」と言うのを何処からとも無く刷り込まれた(しかも無意識に)私は、じゃぁ全員に愛される子を作ろう・・・と言う訳でこんなヒロインの出来上がり♪(どんな!?)
まぁ細かい設定はちょこちょこ出てくるでしょう(多分)
ONE PIECE・・・作品自体は前から知ってたんだけど、アニメや本を読んだりし始めたのは平田さんを意識してからです。
お約束なんですが、最初単行本読んで・・・ボタボタ泣きました(TT)涙腺緩いんですよね、私。
サンジの男前なトコと女性の前でのメロリン状態がツボにはまり、スットーンと落ちて現在に至る(笑)あーこのラブコック、家にいたら毎日の食生活は豊かだろうなぁと思った事が数多い・・・。
それぞれ個人との話を書きたいなぁと思って早一年(爆笑)書き溜めた物は2人分、他の人の話が書けるのかも微妙な状態。でも話自体は気に入ってるのでUPしてしまえ!と言う事に・・・(無責任な人だなぁ)